資格を持っていても採用されない現象はなぜ起きるのか。
パイロットの転職市場では「資格さえ取れば大丈夫」という時代は終わりました。パイロットの転職事情でも詳しく触れていますが、今求められているのは、資格や飛行時間だけではなく、企業が安心して任せられる“人物資本”です。この記事では、資格取得後の就職活動で直面する現実と、その中で生き残るための視点をお伝えします。*ICAO(公式サイト)
資格だけでは通用しない現実
多くの方は人一倍努力し、強い思いで操縦免許取得に励んできたことでしょう。しかし振り返ってみると、それは「資格を取るための勉強」だったのではないでしょうか。資格自体は否定しませんが、日本人に根強い「資格最強説」は、欧米の採用現場ではほとんど通用しません。
特に海外の航空会社は、候補者がどれだけ社会貢献できる人物なのかを重視します。弊社代表がカナダの企業と話す際も「飛行時間や語学力はあって当然。そのうえで本当に現地に来て働く意思があるのか?」と問われることが少なくありません。
飛行時間最強説の終焉
以前は総飛行時間500時間より1000時間の方が有利なのは明らかでした。しかし現在は「飛行時間の質」に注目が集まっています。表向きは総飛行時間1000時間でも、PIC(機長時間)や実運航経験が乏しければ、操縦技術の場面で差が出ます。
たとえば350時間のパイロットでも「横風着陸を2回やり直した経験があり、その後ベテランと練習を重ねた」という具体的なエピソードを語れる人は、単なる時間数以上の評価を受けます。飛行時間は大切ですが、闇雲に稼ぐのではなく、中身を伴わせることが重要です。*Transport Canada(公式サイト)
採用率を上げる3つの力
パイロット転職において有利になるのは、「語学力」「適応力」「勤務地柔軟性」です。 国内から攻めてダメなら海外、という単純な話ではありません。海外採用は現地企業の文化や労働環境に適応できるかどうかを必ず見られます。
例えば、カナダの僻地でブッシュパイロットとして働くチャンスがあるなら挑戦しますか? それとも都市部から離れられない理由で探し続けますか? 語学力を磨き、環境に適応し、場所を選ばない柔軟性があれば、選択肢は一気に広がります。
採用担当が見ている「人格資本」
人格資本とは、やり抜く力、他者への敬意、向上心など、資格や経歴では測れない総合的な人間力です。 飛行時間が多いから人格が優れているわけではありません。過去に747の機長を務めた経歴があっても、組織を乱す人間は存在します。
実際、私が以前雇用したあるベテランは、経歴こそ立派でしたが、職場で部下を振り回し、経営判断にも悪影響を与えました。採用担当は、こうした経験から「資格+人物資本」の両方を見るようになっています。
まとめ
世代によっては「資格は多いほど良い」と教えられた方も多いでしょう。しかしこれからの時代は、分野のプロフェッショナルであると同時に、人格資本を備えた人材こそが評価されます。 資格はスタートラインに過ぎません。その先にある人間力を磨き、採用担当に「この人なら任せられる」と思わせることが、パイロット転職成功の鍵です。

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