パイロット転職と語学力の壁:ICAOレベル5は“通行証”にすぎない
「海外でパイロットとして働きたいが、英語は苦手なので英語をあまり使わない環境を探したい」——多くのご相談で耳にします。しかし航空業界にその世界観は存在しません。パイロット転職や海外でのパイロット就職を目指すなら、必要なのは“スコア”ではなく、実務で通用する会話力です。
今回はパイロットになった後も何かとする英語についてもう一度、要点をまとめて転職率を上げるルートをマッピングしてみましょう。
*この記事はカナダ訪問中の代表谷口が現地の航空企業と対談したことをベースにリアルタイム発信をしています。2025年8月19日更新

目次
- よくある誤解:スコアがあれば十分?
- ICAOレベル5は必須、だが“通過点”
- 面接で問われるのは日常的な英会話力
- 枝葉を広げる会話例
- 語学力向上は最安の自己投資
- 今日からできる実践トレーニング
- まとめ:英語は最大のレバレッジ
よくある誤解:スコアがあれば十分?
「英語スコアが基準を満たせば問題ない」という誤解は根強いですが、現場で必要なのは状況を正確に理解し、適切に伝え、相互理解を作る力です。数値は出発点に過ぎず、会話のキャッチボールができるかを面接やOJTで厳しく見られます。
ICAOレベル5と海外パイロット転職:必須だが“通過点”
カナダなどへのパイロット転職を考えるならICAOレベル5は必ず取得してください。加えてカナダでは就労・永住の選考過程で実際のコミュニケーション力が問われ、スコアだけの「お受験型」はすぐに見抜かれます。レベル5は“通行証”にすぎない——ここで気を抜くと評価は伸びません。
面接で問われるのは日常的な英会話力
多民族国家のカナダでは、相互理解とリスペクトが前提。面接ではCRMや緊急対応のような技術的質問に加え、趣味・経験談(特に失敗からの学び)・家族・将来のビジョンなど“人となり”を深掘りされます。枝葉の質問で展開しても、自然に話をつなげられるだけの語彙・構文・話法が必要です。
枝葉を広げる会話例
“I love fishing and grew up doing it. Japanese fishing lines are world-class; companies like Toray apply precision materials across many industries. That craftsmanship—balancing delicacy and strength—is exactly what aviation demands. It’s a part of my identity that shapes how I approach safety and teamwork.”
面接でのスモールトーク例
単に「釣りが好き」と言うだけでなく、産業・技術・価値観へと話を広げ、職務姿勢や安全文化に接続できるか。日本語では自然にできるこの“枝葉会話”を、英語でも同じ精度で再現する練習が不可欠です。
語学力向上は、パイロットにとって最安で効果が持続する自己投資だ。
語学力向上は最安の自己投資
飛行時間やレーティングの取得は費用と時間が大きい一方、英語は今日から・どこでも・小コストで伸ばせます。しかも一度身につければ機種や勤務地が変わっても価値が落ちにくい“流動資産”。パイロットとしての英語力を磨くことは、求人の選択肢を一気に広げ、年収レンジやキャリアの自由度を押し上げます。
今日からできる実践トレーニング
- スモールトーク1分スピーチ:趣味・家族・最近の失敗と学び・5年後のビジョンを英語で録音→自己添削。
- 面接プロンプト10本:「Tell me about a mistake」「How do you build CRM?」「Describe a conflict and resolution」などを日替わりで。
- ATC+日常英語のハイブリッド:ATC音声で耳を慣らしつつ、ニュースの要約を30秒で英語説明。
- 語彙の“接続練習”:技術語彙(precision, redundancy, margins)を私生活トピックに結び付けて使う。
- 週1模擬面接:録画して表情・間・語尾をチェック。フィラー(uh, you know)の削減も意識。
補足:ICAO対策は重要ですが、“会話で深掘られても崩れない”総合力を同時に鍛えること。試験準備だけでは現場の英語は乗り切れません。
まとめ:英語は最大のレバレッジ
パイロット転職で最も効くレバレッジは語学力です。ICAOレベル5は通過点にすぎず、その先の自然な会話力が評価を決めます。スコアを“持っている”だけでなく、語る・つなぐ・伝える力を鍛えましょう。語学力があるだけで、世界は一気に広がります。
パイロットの転職事情とは?
参考リンク
- 国土交通省 航空局(JCAB) – 日本国内でのパイロット資格やICAO関連情報の一次情報源
- Transport Canada Civil Aviation – カナダにおけるパイロットライセンス要件や就労関連ルール
- ICAO Language Proficiency Requirements – ICAO英語レベル(Level 4〜6)の公式要件