カナダでパイロットとして働くためのガイド
「カナダでパイロットとして働きたい」と考えたとき、多くの人が最初に意識するのはVISA(就労ビザ)ですが、実務の第一関門はむしろLMIA(Labour Market Impact Assessment)です。LMIAは雇用主が政府に対して「この外国人を雇っても国内の雇用に悪影響を与えない(むしろプラスになる)」と示す制度で、承認が得られて初めて就労ビザ申請が現実味を帯びます。全体像詳細はLMIA解説もあわせてご参照ください。

カナダで働くための主要ルート
カナダでパイロットとして働きたい、今の日本から飛び出してカナダの航空会社やフライトスクールへ転職したいと考えている方には必見の内容です。しかしながら、すでにご存知の通り誰しもがカナダで働けるとは限りません。移民制度・州制度・需要職種など条件が多岐にわたるため、自分に合うルートを早期にマッピングしておくことが重要です。
LMIA+就労ビザ
LMIAは雇用主が申請し、政府(ESDC:Employment and Social Development Canada:雇用・社会開発省)が審査・承認する仕組みです。承認後、候補者は就労ビザ申請へ進みます。航空業界では、地方のチャーター会社や僻地オペレーターで国内人材が不足しやすく、ここがLMIA承認の根拠になりやすい領域です。逆に、都市部で一般的な条件だと「国内採用で代替可能」と判断され、承認に至らないケースもあります。
- よくある不承認理由:求人広告期間や媒体が不十分、賃金が基準(Prevailing Wage)を満たさない、職務の特定性が弱いなど
- 期間・タイミング:審査は数週間〜数か月に及ぶことがあり、採用スケジュールと逆算して準備が必要
- 費用負担:基本は雇用主側負担。LMIAを出す会社=本気度が高い会社と見てよい
制度の定義はIRCCとESDCの公式解説が最も確実です:IRCC:LMIAとは?/LMIAが必要か・流れ
PGWP(ポスグラ)からの就労
PGWP(Post-Graduation Work Permit)は、カナダの指定教育機関(DLI)卒業者向けのオープンワークパーミットで、雇用主のLMIAは不要です。フライトスクール卒業後に地方航空会社やブッシュパイロットで経験を積み、契約更新のタイミングでLMIA+就労ビザへ切り替えたり、永住権を視野に入れてキャリアを進めるのが一般的な流れです。
- 有効期間:就学期間に応じ最長3年。期限管理は厳守
- つなぎ方:PGWP終了前に雇用主がLMIAを申請→承認→就労ビザ切替、という順番が王道
- 注意点:PGWPだけで長期就労はできない。早めに次の一手(LMIA/PR)を設計
永住権ルート
中長期でカナダに定着するならExpress Entry(技能移民)によるPR(永住権)取得が本命です。CRS(総合ランキング)スコアは年齢・学歴・語学・職歴等で構成され、LMIA承認ジョブオファーは加点要素として大きく作用します。PRを得ると雇用の安定性が増し、機種移行やベース異動などキャリアの選択肢が広がります。概要は公式のExpress Entry参照。
各ルートの特徴と難易度
同じ「就労」でも、要件・ゴール・難易度は異なります。制度面の要件に加えて、航空業界特有の条件(勤務地の柔軟性、運航形態、季節性、語学運用)も選考結果に直結します。
必要条件
- 語学:面接・ブリーフィング・安全通話で英語が実運用できること。CLB/IELTSのスコア要件に加え、現場での通じ方が重視される
- 免許・経験:CPL/ATPL、IFR、マルチ、夜間、PIC内訳など。単なる総時間ではなく経験の質(横風運用、山岳/水上、氷結条件の判断等)が評価対象
- 適応力・勤務地:僻地ベース、シフトの柔軟性、季節運航(フロート機)への適応。勤務地の制約が多いと選択肢が狭まる
- 人格資本:やり抜く力、他者への敬意、手順遵守と改善姿勢。安全文化にフィットするかは大きな評価軸
有効期限
- LMIA:承認書には有効期限があり、記載期限内にビザ申請=実務では逆算の計画が必要
- PGWP:最長3年。期限ギリギリの切替はリスク大。早期にLMIA/PRへ橋渡しを設計
- PR関連:申請中の雇用継続にはブリッジングワークパーミット活用でリスク低減が可能な場面もある
雇用主の要件
- 求人実績の証明:国内向け募集を一定期間・適切媒体で行った証拠が必要(LMIA)
- 賃金・職務の妥当性:Prevailing Wageを満たす提示、職務の特定性、訓練計画の合理性
- 受入環境:僻地や季節運航では住居・移動・当直体制などの説明が整っているほど審査・採用が進みやすい
制度がクリアでも、最終的には雇用主側の体制と候補者の適応力が結果を分けます。詳細の基礎はLMIAとは何かにまとめています。
航空業界での実例
ケース1:フライトスクール卒業 → PGWPで北部のチャーター会社へ → 山岳・短距離滑走路運用を中心に経験 → 雇用主がLMIA申請・承認 → 就労ビザへ切替 → Express Entry加点でPR取得。
学び:PGWP中から次の一手(LMIA/PR)を逆算。勤務地柔軟性と経験の質がキャリアを押し上げる。
補足:可能であればフライトスクールでCFI(教官資格)を取得し卒業したフライトスクールで2〜3年キャリアを積んだ後にチャーター会社へ挑戦する流れが一般的です。
ケース2:都市部の事業者で内定は出るも、賃金がPrevailing Wage未満でLMIAが不承認 → 条件見直し・地方ベースへ転籍 → LMIA承認 → 切替成功。
学び:賃金条件と職務特定性はLMIAの生命線。都市志向が強すぎると道が狭まる。
ケース3:水上機(フロート)シーズンに合わせて契約 → シーズン中の評価をもとに翌年のLMIA支援を獲得。
学び:季節運航の「入口」に合わせた行動がチャンスを最大化。

カナダの僻地はAmazonすらサービスがないとこもあるためLast One Mileは水上機で輸送する。

パイロット転職戦略も参考に
参考リンク
- IRCC:LMIAとは?(ヘルプセンター)
- IRCC:LMIAが必要か・手続きの流れ
- IRCC:Post-Graduation Work Permit(PGWP)
- IRCC:Express Entry(技能移民)
よくある質問(FAQ)
Q. PGWPにLMIAは必要?
A. 不要です。ただしPGWP満了後も継続就労するなら雇用主がLMIAを申請・承認し、就労ビザへ切り替えるのが一般的です。
Q. LMIAは誰が申請・発行する?
A. 申請は雇用主、審査・承認(発行)は政府(ESDC)です。候補者は承認書を使って就労ビザへ進みます。
Q. 都市部と僻地、どちらが通りやすい?
A. 一般に僻地・特殊運航の方が国内人材不足の根拠が示しやすく、LMIAの可能性が高まる傾向があります。
【免責事項】ご確認ください
本記事は制度の概要を説明するもので、最新の要件や手数料等は必ず公式サイトで確認してください(要件は改定されることがあります)。
25,000円でマッピング